この記事ではそんな疑問を解決します。
1996年のアトランタオリンピックの爆弾テロ事件をテーマにした映画「リチャード・ジュエル」
エンドロールでは、ジュエルや弁護士のワトソンのその後の話が出てくるので「ん?これ実話なのか?」と思った人も多いんじゃないでしょうか。
結論から言うと、この映画は実話に基づいた映画であることは間違いありません。
しかし、もちろん実話でない部分や、脚色によって問題になった表現もあるんです。
この記事では、映画と実話で一致する部分や、異なる部分を解説していきます。
- 簡単なあらすじ
- キャスト紹介
- 「リチャード・ジュエル」実話と同じところ
- 「リチャード・ジュエル」実話との違いところ
- ネタバレ感想
ここからは「リチャード・ジュエル」の内容をネタバレありで書いていきます。
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「リチャード・ジュエルは実話?」映画の概要
まずは「リチャード・ジュエル」概要を紹介します。
「リチャード・ジュエル」映画概要
日本公開日 | 日本公開:2020年1月17日 米公開:2019年12月13日 |
原題 | Richard Jewell |
上映時間 | 131分 |
監督 | クリント・イーストウッド |
評価 | Rotten Tomatoes Tomatometer: 77% Audience Score: 96% Filmarks Score:☆3.9 |
1996年、アトランタで開催されたオリンピックで爆破テロ事件が発生する。警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)が爆弾の入ったバッグを発見したことで、多くの人々の命が救われた。だがFBIは、爆弾の第一発見者だということを理由に彼を容疑者として逮捕。リチャードを担当する弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)が捜査に異議を唱える中、女性記者のキャシー・スクラッグス(オリヴィア・ワイルド)の記事をきっかけに容疑の報道は熱を帯びていく。
引用)シネマトゥデイ
「リチャード・ジュエル」では、1996年の実際に起こった爆破テロについて描かれています。
僕は小さかったので全く覚えていませんが、事件自体はなんとなく知っていたので、当時はかなり大きな事件だったんでしょう。
海外、日本ともに評価は非常に高いです。
Tomatometer(批評家の点数)が若干低めなのは、表現方法で問題があったことが原因かと思います。
その辺は後程解説していきますね。
キャスト
- リチャード・ジュエル: ポール・ウォルター・ハウザー
- ワトソン・ブライアント: サム・ロックウェル
- バーバラ・”ボビ”・ジュエル: キャシー・ベイツ
- トム・ショウ: ジョン・ハム
- キャシー・スクラッグス: オリヴィア・ワイルド
- ダン・ベネット: イアン・ゴメス
- リチャード・ラックレフ: ウェイン・デュヴァル
- ナディア・ライト: ニーナ・アリアンダ
- ブルース・ヒューズ: ディラン・カスマン
主人公であるリチャード・ジュエルを演じたのは、「ブラッククランズマン」に出演していたポール・ウォルター・ハウザー。
リチャード・ジュエル本人に似すぎです笑
弁護士ワトソンを演じたのは「月に囚われた男」や「ジョジョ・ラビット」のサム・ロックウェル。
ジュエルの母親であるボビを演じたのは「ミザリー」でアカデミー主演女優賞を受賞したキャシー・ベイツ。
記者キャシーを演じたのは「her/世界で一つの彼女」のオリヴィア・ワイルド。
オリヴィアは2019年に「ブックスマート」を監督し、非常に高評価を得たことでも有名です。
「リチャード・ジュエルは実話?」元ネタと一致する部分
それでは映画「リチャード・ジュエル」は実話なの?元ネタとどれくらい違いがあるの?というところを解説していきますね。
アトランタオリンピックで起きた爆破テロ事件
すでに何度か書きましたが、この映画で描かれているのは1996年アトランタオリンピックで実際に起こった爆破テロ事件です。
大会7日目の7月27日の午前1時20分頃、センテニアル・オリンピック公園の屋外コンサート会場で爆破事件が発生し、2名死亡、111名が負傷する大事件が起こりました。
映画で描かれるように、警備員であったリチャード・ジュエルは、ベンチの下にあった不審なバックパックを発見して、ジョージア州捜査局の捜査員に知らせ、周囲の非難を行いました。
その後パイプ爆弾が爆発し、被害を最小限にとどめたジュエルは、マスメディアによって英雄として讃えられます。
しかし、数日後にFBIの捜査対象になっていることが地元メディアから報道されると状況は一転。
英雄だったジュエルは、疑惑の人としてFBIから2度の家宅捜査を受け、マスメディアからは昼夜を通して追われ続けます。
そして同年10月に、ジュエルを捜査対象から外すことが正式に決定しジュエルの容疑は晴れます。
爆破テロの真犯人は・・
映画のラストでさらっと名前が出てきましたが、オリンピック公園爆破事件の真犯人はエリック・ルドルフです。
元アメリカ陸軍兵士で、爆弾に詳しいキリスト教原理主義者であり、「法執行官への憧れからくる過剰な正義感、英雄になりたい願望」といったFBIのプロファイルは当たらずしも遠からずといった感じでしょうか。
映画でも言っていましたが、2003年に逮捕され、2020年現在もコロラド州の刑務所で仮釈放なしの終身刑で服役しています。
映画では描かれなかったリチャード・ジュエルのその後
映画では詳細に描かれていませんでしたが、事件の後、リチャード・ジュエルは郡保安官補を務めたりと、法執行官の職を続けました。
法執行官に対して失望をしてもおかしくない事件でしたが、それでも国のために法を守る仕事に就くのがジュエルの芯だったんでしょう。
事件については、報道により著しく名誉を傷つけられたとして、報道機関を相手取って訴訟を起こし、和解金を受け取ることで合意しています。
残念なことに、2007年に44歳の若さで亡くなっています。体調不良による自然死だとされています。
「リチャード・ジュエルは実話?」元ネタと異なる部分
大筋は映画と実話に大きな差はありませんが、異なる部分、あるいは明確でない部分もいくつかあります。
記者キャシーの取材方法が問題に!
FBIのトム・ショウから、記者キャシー・スクラッグスが、リチャード・ジュエルに爆破事件の容疑がかかっていることを聞き出すシーン。
映画では、セックスを交換条件に情報を入手しています。
実話でも、キャシー・スクラッグスがFBIからの情報を入手したという事実はありますが、性的な交換条件を用いたという事実はなかったと彼女の元同僚が証言しているんです。
キャシーは実在した人物ですが、2001年に亡くなっているため、弁明できない故人について侮辱的な描き方をしたことが問題になってしまいました。
この件については、クリント・イーストウッド監督も言及しており、「キャシーはこの事件以前にも警察と密であったり、酒をたくさん飲み、ヘビースモーカーであった」と述べたうえで、事実が不明確な部分は映画として脚色を入れていると述べています。
という意見はごもっとも。
その辺は、ネタバレ感想で掘り下げていきたいと思います。
リチャード・ジュエル犯人説のリーク元は不明
映画では、リチャード・ジュエルへの容疑の発端となったのは、ジュエルの元職場である大学の学長の情報提供でした。
行き過ぎた正義感でが学生に対して干渉しすぎたり、警察を名乗ったりしたジュエルを危険視してクビにした学長が、爆破事件を知って「ジュエルが犯人の可能性がある」とFBIに情報提供します。
しかし、実話ではリーク元は明かされていません。
映画のように情報提供者がいたのかもしれませんし、「第一発見者が怪しい」というプロファイルで容疑をかけられただけかもしれません。
真実は闇の中ですね。
「リチャード・ジュエルは実話?」ネタバレ感想
「リチャード・ジュエル」の実話との違いについて書いてきました。
ここからはそれを踏まえて感想を書いていきます!
まず全体的な感想ですが、マスメディアやFBIの不条理にさらされながらも、ラストにびしっと一言反撃して疑いを晴らす姿は観ていて爽快でしたし、映画として面白かったです。
マスメディアによる人権侵害への警鐘
この映画のメインテーマはもちろん「マスメディアによる人権侵害」ですよね。
無責任に騒ぎ立て、市民を扇動し、人権もプライバシーも無視して精神的にジュエルと家族を追い込んだマスコミに、観ていてイライラしました。
マスメディアによる市民の人権侵害は、「ハドソン川の奇跡」でも描かれていまして、こちらもクリント・イーストウッド監督作品。
クリント・イーストウッドは映画を通して、メディア・リンチやSNSによる誹謗中傷の危険性を伝えています。
「リチャード・ジュエル」でも、FBIとマスメディアが
- 第1発見者
- 法執行官へのあこがれ
- 強い英雄願望
- 独身
- マザコン
- 銃所持者
- 税金未納
- 白人の太った男性
といった”イメージ”のみで、証拠も無いのに1人の男性とその家族をどん底へ突き落しました。
こうした強いメッセージ性が評価され、多くの人から共感と賛同を得られているのが本作です。
しかし、どうしても納得がいかないことがあるんですよね。
それが「キャシーの印象操作」です。
キャシーの印象操作が問題に!
この映画のテーマは「マスメディアによる不確定情報による冤罪」
上辺だけの条件だけをみて、「爆弾魔っぽい」という理由で容疑をかけられ生活を奪われたジュエル。
こうしたマスメディアを糾弾しているのが本作です。
しかしすでに述べたように、キャシーがセックスの代わりに情報を入手したというのは完全な創作なんです。
さらに言うと、キャシーは「酒飲みで、ヘビースモーカーで、警察に入り浸っていて、情報を入手するためにあらゆる手段を講じた」という情報をもとに「じゃあ、情報入手のために体くらい売るだろ」という憶測で作られた設定なんですよね。
これはクリント・イーストウッド監督も認めています。
つまりコレ、批判していたメディアとおんなじことやってるんですよ。
実話をもとにした映画を作成するにあたり、わかっている情報から人物像を推定し、映画的に盛り上がる脚色をするのは必要ですし、仕方ないことだと思います。
ですが、この映画でそれをやったらおしまいじゃないかと。
しかも「女性記者は体を使って情報をとっている」というステレオタイプな偏見丸出しのキャラクターを作り上げたのは良くなかったかなーと思います。
個人的には、最近のジェンダー論やらセクハラ・パワハラにあまりに過敏すぎて、映画のような創作物に影響出ちゃう風潮には反対なんですが、それはあくまで作り物の範疇での話。
実在する、しかも実名で個人が特定できる人物を映画で描くのであれば、そこには責任が伴うんじゃないでしょうか。
というところが、実話をベースにした映画だからこそちょっと引っかかった点です。
ちなみにこの映画の内容をめぐって、キャシーが所属していたアトランタ・ジャーナル社は制作サイドを名誉棄損で訴えています。
この映画も扇動的じゃない?
もう一点気になったのが、この映画も割と扇動的な映画じゃないかということ。
「マスメディアは事実を捻じ曲げ、無実の善良な市民を地獄のような生活に貶める最低の人間だ」
「FBIは、自分たちの利益のために証拠もない市民を犯人であると断定し、人権を無視した捜査を行った異常者集団だ」
ちょっと極端な言い方をしましたが、この映画を観た人はこんな感想を抱くんじゃないでしょうか。
しかし、FBIが活躍する映画を観た後は、世界のために戦う素晴らしい機関だと感じませんか?
つまり、映画ってそれだけ影響力が強い媒体なんですよね。
音楽や俳優の演技によって悲劇的に描かれる分、ニュースより影響があるかもしれません。
もし「リチャード・ジュエル」を観た人が、FBIの人に対して心無い言葉を言えば、それはこの映画の扇動的表現によって生み出された被害者です。
まあ、そんなことを言っていたら映画なんて観られませんし、結局は受け取る側の倫理観や道徳観にゆだねられるんですけどね。
何が言いたいかというと、この映画を観て「メディアふざけんな!FBIとか信用できない!」となっている人は、メディアに影響されてリチャード・ジュエルを糾弾した人々と同じなんじゃないかということです。
完全な悪を作らないのは、さすがクリント・イーストウッド
ここまで文句多めでしたが、そうは言ってもこの映画では「完全な悪」を作らないように工夫されているなと感じました。
FBIはあくまで「一般論」をベースにプロファイリングを行い、犯人の可能性が高い人物を捜査しただけです。
キャシーも、不確定な報道を行ったことはもちろん悪いことですが、あくまで犯人がジュエルであると信じた上での行動であり、無実であるとわかってからは心を入れ替えています。
リチャード犯人疑惑の発端である学長も、爆破テロ事件がこれ以上起こらないようにという正義感からの通報でした。
この映画の中では全員むかつくクソ野郎ですが、1人の悪人がいるわけではなく、それぞれ別の側面を持っているのが、クリント・イーストウッド監督のうまさですよね。
「リチャード・ジュエルは実話?」元ネタとの違いまとめ
「リチャード・ジュエル」の実話との違いや、その中に潜む問題について感想を書いてきました。
扱ったテーマのせいで、ブーメランのようにクリント・イーストウッドに批判が向けられてしまうという難しさはあります。
しかし、近年のメディアレイプやSNSによる匿名の誹謗中傷の危険性を伝える、良い映画だったんじゃないでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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