こんにちは、ペペです。
”全編ワンカット”や”その場にいるような臨場感”と話題の戦争映画
“1917 命をかけた伝令”
についての感想・考察・解説をしていきます。
- ワンシーンワンカットの臨場感ある映像
- ストーリーは単純明快。仲間に伝令を届けること!
- 戦場のおぞましさや過酷さがリアル
そんな本作の評価は・・
(☆1~10の10段階評価)
二人のイギリス人兵士が、仲間の部隊に作戦を伝えるというストーリー。
周囲に転がる兵士の死体。どこにいるかわからない敵。飛び交う銃弾。
いつ死ぬかもわからない極限状態を、(ほぼ)ワンカットという手法で映像化し、観ているだけで、まるでその場にいるかのような体験ができる、とんでもない映画でした。
戦争映画といっても、国同士の関係や、おおぜいの軍関係者などは登場せず、非常にシンプルでわかりやすい作品であるのも特徴です。
それでは、本作の概要・あらすじ・感想を書いていきます。
Contents
「1917 命をかけた伝令」の基本情報
日本公開日 | 2020年2月14日 |
原題 | 1917 |
上映時間 | 110分 |
日本配給 | 東宝東和 |
- 撮影賞
- 視覚効果賞
- 録音賞
なんと3冠受賞しています。
作品賞・脚本賞・監督賞・国際長編映画賞の4冠達成した「パラサイト 半地下の家族」には一歩及びませんでしたが、僕個人的な映画の面白さで言えば、本作の方が良かったです。
▼第92回アカデミー賞4冠の「パラサイト 半地下の家族」の感想はこちら

「1917 命をかけた伝令」あらすじ
引用)YouTube「ユニバーサル・ピクチャーズ公式」より
第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。
進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600人の中にはブレイクの兄も配属されていたのだ。
戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる―
刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・。
制作陣・キャスト(ネタバレあり)
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引用)映画「1917 命をかけた伝令」公式HPより
それでは本作を作った最高の監督、キャスト陣の紹介をどうぞ。
監督 サム・メンデス
スカイフォールは、クリストファー・ノーラン監督の影響を受けたという意見もあり、本作も、同氏の監督作品「ダンケルク(2017)」の雰囲気を感じる作品でした。
この辺の考察はサム・メンデス監督はクリストファーノーラン監督に影響を受けている?にて解説しています。
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登場人物(キャスト)
ウィリアム・スコフィールド (ジョージ・マッケイ)
面長主人公。
メダルもらえるくらい強い。しかしそのメダルを、フランス人とワインと交換してしまうドライな一面も。
トムに巻き込まれて伝令の任務に就くが、その冷静さと強さで任務を達成した。
トム・ブレイク (ディーン=チャールズ・チャプマン)
目がキラキラのイケメン。
見た目通り、明るく、敵でも助けるという優しさも持つ。友達になるならウィルよりトム。
兄貴は見たらわかるとのことだったので、兄も同じ俳優さんかなと思いましたが違いましたね。
エリンモア将軍 (コリン・ファース)
名優ワンポイント使用第一弾。
知らなかったら気づかなかったかもしれません。コリン・ファースを2~3分のために起用するって贅沢ですよね。
マッケンジー大佐 (ベネディクト・カンパーバッチ)
名優ワンポイント使用第二弾。
伝令を聞いてしっかり攻撃中止した優秀な指揮官。
第三者の前で伝令伝えろ、的な振りがあったので、マッケンジー大佐が伝令聞いても構わず攻撃続行しちゃうのかと思いましたが、意外と素直でした。
最近では「ドクターストレンジ(2016)」として有名なカンパーバッチですが、大作のイギリス人役として安定して出演してますね。
ジョセフ・ブレイク中尉 (リチャード・マッデン)
マッケンジー部隊に所属するトムの兄。
家族の訃報にも感情を押し殺し耐える軍人の鑑。これまたイケメン。
「1917 命をかけた伝令」感想・考察・解説(ネタバレあり)
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引用)映画「1917 命をかけた伝令」公式HPより
それではネタバレありで疑問点・ポイントを解説・考察しつつ感想を書いていきます。
全編ワンカットって本当?
結論から言うと
「全編(を途切れることなくひとつながりの映像で見せる、ワンシーン)ワンカット」です。
つまり、一つのシーンはワンカットで撮ってるけど、シーンがいくつかあるよってことですね。通常の映画は、ワンシーンを何カットも撮影し、様々な方向から撮影した映像を繋ぎ合わせて作ります。しかし本作は、一つのカメラでひたすら主人公たちを追い続けるため、かつてない臨場感が生まれるんです。
最長9分のカットを繋ぎ合わせる綿密さ
僕は観終わった後、
と意気揚々と帰ってきました。
そして知る衝撃の事実。
ワンカットはじつは最長9分間。
え・・全く分からなかった。
正直、観ていて切れ目の部分が全く分かりませんでした。それもそのはず、つながりを意識するために、天気や太陽の位置や雲の位置が変わっていることを映らないようし、半年以上にわたる調整とリハーサルを重ねて本作は撮影をされているんです。
数キロの塹壕を作って撮影
引用)YouTube 「シネマトゥデイ」より
本作で登場する塹壕も、実際にショベルカーで1.2キロ掘って作成しています。シーンとシーンのつなぎ目を隠すためのポイントを作りつつ、違和感のない設計をする必要があったので、美術監督は相当しんどかったでしょう・・。
撮影後はすべて壊して埋めたとのことです。残して観光地にして欲しいくらいですね。
実際の撮影地はもっと狭く、広大な平原は一部加工を加えることで表現されていたようなので、観光地にしたらちょっと残念かもしれませんが・・
こうしたセットの中で、4か月かけて綿密なリハーサルの後、65日間の撮影が行われました。
あらゆるサイトで語りつくされていますが、僕的には「ワンカットかどうかの議論はどうでもよくない?」と思っています。
全編ワンカットは嘘だからダメと言わんばかりの批評もあるので・・。
そうではなく、このワンカット風という撮影手法によって、「まるで戦場の真っただ中に放り込まれたような体験を可能にした」ことが画期的だと感じます。
「1917」は実話なの?
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引用)映画「1917 命をかけた伝令」公式HPより
サム・メンデス監督が、祖父であるアルフレッド・H・メンデスから聞いた話をベースとしています。エンドクレジットでも表記がありました。
1917年当時19歳だったアルフレッドは、伝令兵として第一次世界大戦に参加し、その経験を記述していました。その記録が、今回の「1917」にインスピレーションを与えたんです。
第一次大戦では、それまでの人が馬に乗り、武器を持って戦う戦争から、技術の革新的進歩によって、航空・戦艦・通信を用いた戦争へ移り変わっていきました。
しかし、本作品中でもあるように、通信の使用は一部だし、敵に妨害されることもしばしば。部隊間の重大な命令を伝令が伝えることは、戦争での日常的な光景であり、この映画はそうした日常を切り取った実話であると言えます。
マッケンジー大佐が数日後にはまた攻撃命令が来る、と言っていたように、今回の伝令は戦争のごくごく日常。連合軍(イギリス・フランス等)とドイツの休戦は1918年11月なので、この映画の後も1年半戦争が続いたんです。
「1917」は何の戦争?どこの国の戦争?
戦争映画にありがちなのが、”時代背景わからない問題”。
映画や歴史好きからしたらなんで知らないのっていう常識かもしれませんが、意外と世界の戦争事情って詳しくは知らないですよね。
ということで、簡単に解説していきますね。
時代は第一次世界大戦
- 時代は第一次世界大戦
- 主人公はイギリス軍
- 敵はドイツ軍
- 舞台はフランス
第一次世界大戦I(1914~1918)は、かな~~り簡単に言うと連合国(イギリス・フランス・ロシア等)と、同盟国(ドイツ・オーストリア=ハンガリー帝国等)の戦争で、死亡者は1,600万人におよぶ史上死亡者が最も多い戦争です。
その原因の一つが、本作でも描かれていた「塹壕戦」。
高い防御性と戦略性を持ちますが、そのせいで膠着状態が続き、多くの戦死者を生みました。
また、飛行機による空中戦(ドッグファイト)も進歩していました。飛行機が墜落するシーンはこの映画最大の見どころと言ってもいいでしょう。
退却するドイツを追うイギリス軍
この作品は、ドイツ軍が戦場の最前線から撤退するアルベリッヒ作戦をもとにしています。実際にこの撤退作戦は存在しています。
イギリス軍D連帯第2大隊はこれを好機と追撃をかけようとしますが、この時航空写真を見ていたイギリス本軍は、これがドイツ軍の罠であることに気づきます!
しかし、通信手段はドイツに妨害されていて、通信方法は伝令のみ。

そこで白羽の矢が立ったのが、前線でまさにドイツ軍に攻め入ろうとしているイギリス軍のジョセフを兄に持つトム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン<\b>)、そして近くにいたから巻き込まれちゃったウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)でした。
彼らがこの伝令を伝えに走る!というのが本作の流れですね。

サム・メンデス監督はクリストファー・ノーラン監督の影響を受けている?
そうなんです。
サム・メンデス監督は、かなりクリストファー・ノーラン監督の影響を受けているようです。
「スカイフォール」は「ダークナイト(2008)」との共通点が多く、「1917」では「ダンケルク」や他のノーラン作品との共通点が多く見受けられました。
「1917」は感動演出が丁度良い
「リアルを追求しすぎて面白みがない」などの批判的意見も一部ではあるようですが、今作の良いところは過剰な演出がないことでしょう。
戦争映画ってどうしてもお涙頂戴ものになりがち(特に邦画は)なんですが、この映画って「ほら。ここで泣くとこだよ」っていうシーンがほぼ無いんです。
その理由の一つは、トムとウィルの関係性でしょう。
彼らは同じ部隊に所属しているとはいえ、他人同士。トムが伝令として呼ばれた際に近くにいたから、一緒に伝令をしているに過ぎません。
しかし、伝令という共通の目的や、道中聞いたトムの家族の話、そして地下の爆発から救ってくれたこと等から仲間意識を強く持ち始めた直後の彼の死。救えたのではないかという葛藤が、観ている側にも伝わってきます。
そう、映画を観ている人もまた、ウィルとトムの出会いから別れをリアルタイムで追っているからこそ、その感情のすべてを共有できるんです。
過剰な演出がないけれども、時間的カットが全く無い本作だからこそ、主人公二人と同じ経験を同時にできるところが、本作の唯一無二の特徴でしょう。
トムの顔が青白くなったのは演出じゃない?
トムがドイツ兵に刺されて息を引き取るまでの数分間、みるみる顔の血の気が引いていくシーンが衝撃的でしたが、撮影監督曰く「特殊な演出はしていない」とのこと。
・・マジすか?
本当だとすると、トムを演じるディーン=チャールズ・チャップマンの演技力はとんでもないですね。もはや演技力を超えている気もしますが。
場面転換のポイントはウィルの意識?
この映画で唯一場面が転換したのが、ウィルがドイツ兵との銃撃の末、意識を失った時でした。
このことから、この映画はウィルの意識に依存していると考えられます。本作の一番最初のシーンも、寝ているウィルが目を覚ますシーンから始まります。
こうした点からも、初めからこの映画はウィル目線である、つまり初めから主人公はウィル一人だったともいえるかと思います。
「1917 命をかけた伝令」 まとめ
「2人の主人公が、作戦中止の命令を伝令する」
それだけのストーリーですが、ワンカットという手法を用いたことによる圧倒的没入感によって最高の戦争映画へと昇華した本作。
ワンカットの手法や、物語の背景を知ってから観ると、また別の楽しみがあります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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